2026年5月29日

「糖類ゼロ」「糖質ゼロ」のお菓子やジュースは、糖尿病でも安心して食べられる?「ゼロ」の表示に隠された落とし穴と、血糖値を上げにくい間食の賢い選び方を、吹田市の糖尿病専門医がわかりやすく解説します。
この記事でわかること
「糖類ゼロ」と「糖質ゼロ」の決定的な違い(本当にゼロではない理由)
糖類ゼロ食品が血糖値に与える影響と注意すべき甘味料の種類
糖尿病の方が間食(おやつ)を選ぶときの具体的な5つのコツ

Q:お菓子で見かける「糖類ゼロ」と「糖質ゼロ」は同じ意味ですか?
A:いいえ、異なります! 「糖類」は砂糖やブドウ糖などの単糖類・二糖類だけを指します。一方で「糖質」は、糖類に加えてでんぷんや糖アルコールも含めた、より広い仲間を指します。 したがって、「糖類ゼロ」と書かれていても、でんぷんや糖アルコールなどの「糖質」は含まれているケースが多々あります。

つい手が伸びる「ゼロ」表示の甘い罠
「糖類ゼロのチョコレートなら、血糖値を気にせず毎日食べても大丈夫ですよね?」
当院の管理栄養士による栄養指導でも、このようなご質問を本当によくいただきます。ある患者さんは、「糖類ゼロのおやつを毎日の楽しみにしていたのに、HbA1c(過去1〜2ヶ月の血糖値の指標)がなかなか改善しないんです……」とおっしゃっていました。コンビニやスーパーに並ぶ「糖類ゼロ」「糖質オフ」のパッケージは、甘いものを我慢している方にとって非常に魅力的に見えます。しかし、「ゼロ」という言葉の裏にある仕組みを正しく理解しておかないと、よかれと思って選んだ食品が血糖コントロールを乱す原因になってしまいます。
「糖類」「糖質」「炭水化物」の違いとは?
食品のパッケージの裏にある「栄養成分表示」を正しく読み解くために、まずは言葉の関係性を整理しましょう。大きく分けると「炭水化物 = 糖質 + 食物繊維」です。そして、糖質は、先に述べたようにさらに分類されます。つまり、「糖類ゼロ」は「砂糖やブドウ糖がゼロ(微量)」というだけで、でんぷんや糖アルコールなどの糖質はしっかり含まれている可能性があるのです。
「ゼロ」は本当の「0(ゼロ)」ではない
消費者庁の食品表示基準では、以下の量が基準となっています。
【食品100gあたり(飲料は100mlあたり)糖類が0.5g未満であれば「ゼロ」「無」「ノン」と表示してよい。】
つまり、「糖類ゼロ」と書いてあっても、ごくわずかに糖類が含まれている場合があります。1回量は少なくても、一度にたくさん食べたり、何個もリピートしたりすれば、糖類の摂取量は積み重なってしまいます。
糖類ゼロの食品は血糖値に影響しないのか?
結論からお伝えすると、「血糖値への影響がゼロとは限らない」のが実情です。その理由は、使われている甘味料の種類や、食品に含まれるその他の成分にあります。
1.「糖アルコール」の種類による違い
糖類ゼロのお菓子には、砂糖の代わりに「糖アルコール(マルチトール、キシリトール、ソルビトールなど)」がよく使われます。糖アルコールは砂糖より血糖値を上げにくいものの、完全にゼロではありません。
2.「人工甘味料」のメリットと最新研究
アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムKなどの「人工甘味料(高甘味度甘味料)」は、カロリーがほぼゼロで、直接的に血糖値を上昇させることはないとされています。ただし、近年の研究では、人工甘味料が腸内細菌叢(腸内フローラ)に影響を与え、長期的にはインスリンの効きやすさ(インスリン感受性)に影響を及ぼす可能性も報告されています。まだ結論が出きっていない分野ではありますが、「いくら大量に摂っても100%安心」とは言い切れないのが現状です。
3. カロリーと脂質の見落とし
「糖類ゼロ」のチョコレートやクッキーの中には、コクを出すために脂質が多く使われており、カロリーがかなり高い商品もあります。体重管理が必要な糖尿病治療においては、糖類だけでなく、総カロリーや脂質の量も確認する必要があります。
【院長(腎臓専門医)からのアドバイス】
腎機能の低下(慢性腎臓病:CKD)を合併されている糖尿病患者さんの場合、お菓子のカロリーだけでなく、含まれているタンパク質やカリウム、リンの量にも注意が必要です。 当院では、糖尿病内科と腎臓内科が密に連携し、管理栄養士とともに「患者さんにとって、何をどこまで安全に食べて大丈夫か」を個別に判断しています。
糖尿病の方が「賢く間食(おやつ)」を選ぶ5つのコツ
当院の副院長(糖尿病専門医)も管理栄養士も、患者さんに「間食は絶対に禁止!」とはお伝えしていません。 大切なのは、ストレスを溜めないよう「賢く選んで、美味しく食べる」ことです。栄養指導では、実際にコンビニやスーパーで買える具体的な商品名を挙げながら、以下のコツをお伝えしています。

① 「糖類ゼロ」ではなく、裏面の「糖質○g」を見る
間食1回あたりの糖質量は10g以下に抑えるのが目安です。
② 素焼きナッツや高カカオチョコ(カカオ70%以上)を活用する
これらは糖質が少なく、食物繊維や良質な脂質が含まれているため、血糖値が上がりにくい優秀な間食です。
③ 食べる分だけ「小皿」に出す
袋のまま食べると「ゼロだから大丈夫」という安心感から食べすぎてしまいます。あらかじめ量を決めておきましょう。
④ 空腹時を避け、食後のデザートとして楽しむ
空腹時に単独でおやつを食べるよりも、食後のデザートとして少しだけ食べるほうが、血糖値の急激な上昇(血糖値スパイク)を抑えやすくなります。
よくある質問(FAQ)
Q. 糖類ゼロのジュースを毎日飲んでも大丈夫ですか?
A. 血糖値を直接上げる心配は少ないですが、人工甘味料の甘みに慣れてしまうと、味覚が麻痺してかえって甘いものを欲しやすくなる傾向があります。水分補給は水やお茶を基本とし、ゼロカロリー飲料は「たまの楽しみ」として週に数回程度に留めるのがおすすめです。
Q. 糖質ゼロのお菓子を食べたらお腹がゆるくなったのですが…
A. 糖類ゼロのお菓子によく使われる「マルチトール」や「ソルビトール」などの糖アルコールは、小腸で吸収されにくいため、一度に多く摂ると一過性にお腹がゆるくなることがあります。ご自身の体調に合わせて、少量ずつ楽しむようにしてください。
吹田いろどりクリニックからのみなさまへ
「おやつを食べたいけれど、何を食べていいかわからない」「主食と甘いもののバランスを相談したい」という方は、どうぞお気軽にご相談ください。
当院では、副院長(糖尿病専門医)による専門的な診察はもちろん、経験豊富な管理栄養士が、患者さんの普段のライフスタイルや好みに合わせた「無理のない食事プラン」を一緒に考えます。
当院は糖尿病の指標である「HbA1c」が採血から約30分でわかる迅速測定器を導入しています。その日の診察で現在の数値を正確に把握し、その場で具体的な食事や間食の選び方をアドバイスすることが可能です。
我慢ばかりの治療ではなく、 笑顔で続けられる健康的な毎日のために、スタッフ一同サポートいたします。
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【参考文献】
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「炭水化物 / 糖質」 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-018.html
- 消費者庁「栄養成分表示について」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/nutrient_declearation
- 日本糖尿病学会.「健康食スタートブック」 https://www.jds.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=12
【執筆者】
部坂 有紀(へさか ゆき) 吹田いろどり腎臓・糖尿病内科クリニック 副院長
※本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。
※症状には個人差があり、記載内容がすべての方に当てはまるわけではありません。
※具体的な治療方針については、必ず医師の診察をお受けください。