
腹膜透析「おうちで透析」
腹膜透析「おうちで透析」
腹膜透析(PD:Peritoneal Dialysis)は、内臓の表面と腹壁内面を覆う腹膜に囲まれた腹腔に透析液を入れて行う透析治療です。腹腔の透析液には腹膜を介して血液中の老廃物や余分な水分、塩分などが移行して血液が浄化します。老廃物や水分などが十分に移行した透析液は体外に出します。
血液透析との違いは、ご自分で管理して透析治療が行えるため通院頻度を低く抑えることができる点です。また、水分やカリウム制限が比較的ゆるいため、食事制限の負担も軽減できます。ただし、お腹にカテーテルがあるため感染リスクがあり、注意して管理を続けて変化があった場合はすぐに受診する必要があります。
腹膜透析には、CAPD(連続携行式腹膜透析)とAPD(自動腹膜透析)の2種類に大きく分けられます。ライフスタイルや病態などに合わせて選択しますが、途中で違う透析方法に変更することもできます。
透析液のバッグ交換を1日に3〜5回行う方法で、朝・昼・夕方・就寝前など決まった時間に交換する必要があります。1回のバッグ交換には約30分かかります。基本的に患者さんご本人か、介助されるご家族が交換や管理を行います。
就寝時間を利用して自動的に透析液の交換を行う方法です。自由に活動できる時間を長く確保して、それまでとほとんど変わらない生活を送るために開発されました。フルタイムのお仕事も十分可能です。腹膜透析を受けている約40%がAPDによる治療を行なっています。就寝時以外に、昼間にも腹腔内へ透析液を入れて十分な透析量を確保する必要が生じる場合もあります。これは「CCPD」と呼ばれます。
腹膜透析では、老廃物や余分な水分などが含まれた透析液を取り出す排液を行なってから、新しい透析液をお腹に注入するバッグ交換が必要になります。
バッグ交換をする場合、お腹から出ているカテーテルに排液用の空のバッグと、新しい透析液が入ったバッグのセットを接続します。お腹の中の排液が出たら新しい透析液をお腹に入れて、空になった透析液バッグと排液が入ったバッグをカテーテルから取り出します。
バッグ交換は手動で行う場合と、器械を使って行う場合があります。自動で行う器械は音声ガイダンスをしてくれるタイプが多いため、うっかりミスを防ぐことができますし、目が見えにくい場合も操作しやすいというメリットがあり、約70%の方が自動で行っています。
腎臓の働きが悪化してきて透析を必要とする時期が近づいてきたと判断され、腹膜透析を選んだ場合は、事前準備としてお腹の中に透析液を入れるためのカテーテルという管を挿入するための手術が必要になります。
カテーテルの先端がお腹の中で移動してしまうと、透析液の交換が不十分にしかできなくなってしまいます。それを防止するために、挿入手術ではカテーテルの先端がお腹の中で最適な位置を保てるように固定します。これにより、腹膜透析治療開始後のトラブルの発生率を抑えることができます。
なお、カテーテルは出口部と呼ばれる部分がお腹の皮膚の下から出ています。この出口部分は左右どちらかに作ることが多くなっています。その際には、ベルトやシートベルトなどに当たる場所や、座った時に圧迫される腹部のシワ部分などに当たらないよう、患者さんとしっかり相談した上で慎重に位置を決めています。
透析液交換時にミスをする、出口部から感染する、ご自分の腸からの細菌に感染するなどによって、腹膜透析では腹膜炎を起こす可能性があります。腹膜炎を起こした場合、透析液の混濁・腹痛・発熱などの症状が起こります。
バッグ交換を正しい手順で行うなど、管理をしっかり行うことで腹膜炎の発症をある程度防ぐことができます。症状に気づいたらできるだけ早く受診してください。
カテーテル出口部や皮下トンネル部が細菌感染を起こす可能性があります。出口部やトンネル部に疼痛・発赤・腫脹・出口部からの浸出液などの症状が生じます。出口部のケアをしっかり行うことで予防に努めてください。なお、症状があった場合にはできるだけ早く受診してください。
長期に渡る腹膜透析、不十分な状態で継続した腹膜透析、生体適合性が悪い透析液の使用などで腹膜劣化が起こり、それによって被嚢性腹膜硬化症を発症するとされています。腸の癒着や腸閉塞などを起こすことがあるため大変危険な合併症ですが、現在ではリスクを下げる方法や治療方法が明らかになってきています。透析液の改良によって生体適合性が高い透析液が使用されるようになっていますし、腹膜の定期的なチェックもリスク低下のためには重要です。
また、長期間に渡って無理に腹膜透析を行わず、適切なタイミングで血液透析に変更するなどにより、被嚢性腹膜硬化症を防ぐことができます。
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