2026年3月23日

医師から「透析」という言葉を聞いて、目の前が真っ暗になってしまう方は少なくありません。
「仕事はやめなければならないのか」
「大好きな旅行にも行けないのか」……。

しかし、現代の医療において「透析=不自由な生活」とは限りません。
吹田いろどり腎臓・糖尿病内科クリニックでは、腎臓専門医・透析専門医として、患者さん一人ひとりの思いやライフスタイルを尊重し、最適な治療法を共に選ぶ「SDM(共同意思決定)」を大切にしています。
「透析」と聞いて、多くの方がイメージするのは「血液透析(HD)」ではないでしょうか。
腎臓は、血液中の老廃物を尿として排出する重要な臓器です。その機能が著しく低下した(末期腎不全)場合、腎臓の代わりとなる治療(腎代替療法)が必要になります。
現在、日本で最も一般的なのは血液透析ですが、週3回・各4時間の通院治療は、移動や準備を含めると生活時間の多くを占めることになります。また、短時間で集中的に水分や老廃物を取り除くため、治療後の倦怠感に悩まされる方も少なくありません。
もし、医師から「透析」という言葉を提示されたら、まずは今のご自身の状況や、大切にしたい「これからの暮らし」を一度整理してみましょう。
・仕事や家事を現役で続けたい
・週3回の通院は、スケジュールの調整が難しい
・できるだけ自宅で、リラックスして治療を受けたい
・旅行や趣味を諦めたくない
・腎移植についても詳しく話を聞いてみたい
もし一つでも当てはまるものがあれば、血液透析(HD)以外の選択肢を検討する大きな価値があります。
話題の著書『透析をやめた日』でも触れられているように、「周囲の患者さんや医師が勧めるから」という消極的な理由だけで治療法が決まる時代は終わりつつあります。
大切なのは、ご自身の体の状態とライフスタイルを掛け合わせ、納得のいく方法を専門医と共に探っていくこと。自分らしい毎日を支えるための治療を、私たちと一緒に考えてみませんか。
腎代替療法:3つの選択肢
腎臓の働きを補う方法は、大きく分けて3つあります。それぞれの特徴を知り、ご自身のライフスタイルに照らし合わせてみましょう。

1.血液透析(HD)
「通院して、医療機関で血液をきれいにする方法」 日本で最も普及している方法です。
場所・頻度: 透析施設へ週3回通院し、1回4〜5時間かけて行います。
メリット: 常に医療スタッフの管理下で治療を受けるため、安心感があります。
デメリット: 通院による拘束時間が長く、仕事や私生活の調整が難しくなりがちです。また、短時間で集中的に浄化するため、治療後に倦怠感を感じる方も少なくありません。
2.腹膜透析(PD)【当院が推奨する「おうち透析」】
「ご自身のお腹の膜を利用して、日常生活の中で行う方法」 欧米では約20%の患者さんが選択されていますが、日本ではまだ認知度が低いですが、「自由度の高い」治療法です。
場所・頻度: 通院は月1〜2回のみ。ご自宅や職場でご自身のペースで行います。
メリット:
①時間の自由: 仕事、趣味、旅行など、これまでの生活を継続しやすい。
②体に優しい: 毎日ゆっくりと浄化するため体への負担が少なく、「残存腎機能(ご自身の腎臓の力)」を長く保ちやすいという大きな利点があります。
デメリット: 機器の操作など一定の自己管理が必要ですが、適切なサポートで十分に習得可能です。
3.腎移植
「他の方から提供された腎臓を移植する方法」 親族からの「生体腎移植」と、亡くなられた方からの「献腎移植」があります。
メリット: QOL(生活の質)が高まります。透析治療から離脱でき、食事や活動の制限が緩和されます。
デメリット: ドナー(提供者)が必要であることや、移植後は拒絶反応を抑えるための免疫抑制剤を生涯飲み続ける必要があります。
上記以外にも、それぞれの治療法には細かなメリット・デメリットがあります。
大切なのは、数字上のデータだけでなく『あなた自身の日常』に合うかどうかです。少しでも気になることや、詳しく知りたいことがあれば、どうぞお気軽にお問い合わせください。あなたの不安に寄り添い、丁寧にお答えいたします。
なぜ今、SDMが重要なのか
後悔しない治療選びのために最も大切なのは、「医師に勧められるがまま」ではなく、「自分のライフスタイルに合った治療法を、納得して選ぶ」ことです。
これを、SDM(Shared Decision Making:共同意思決定)と呼びます。

1.医療者と患者さんは「対等なパートナー」
SDMとは、単に説明を受けて同意する(インフォームド・コンセント)だけではありません。
医療者: 専門知識や最新の治療データを提供します。
患者さん: ご自身の価値観、仕事、家族、趣味、そして「これからどう生きたいか」という希望を伝えます。
この両方の情報をテーブルの上に出し合い、対話を重ねながら、一緒に「あなたにとっての最適解」を導き出していくプロセスです。
2.なぜ今、SDMが重要なのか
日本腎臓病SDM推進協会も、腎代替療法の選択におけるSDMの重要性を強く提唱しています。
透析は一生続く治療だからこそ、医療側の都合で決めるのではなく、患者さん一人ひとりの人生に治療を寄り添わせる必要があります。
「納得して自分で選んだ」という実感が、その後の治療への前向きな姿勢や、高いQOL(生活の質)の維持につながるからです。
当院では、このSDMを診療の柱に据えています。どんなに小さな不安や「こうしたい」という希望も、ぜひ私たちに聞かせてください。一緒に、あなたらしい未来をつくる治療法を見つけていきましょう。
◆次回予告
腎代替療法の選択肢を広げるために。次回は当院が注力している『腹膜透析(PD)』について、当院の腹膜透析サポートを解説します。
参考文献
― 日本透析医学会「維持血液透析ガイドライン:血液透析処方」
― 日本透析医学会「維持血液透析ガイドライン:血液透析導入」
― 日本腎臓学会「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2024」
― 日本腹膜透析医学会「腹膜透析ガイドライン」
- 腎臓病SDM推進協会「腎代替療法におけるSDM」
― 堀川惠子「透析を止めた日」
【執筆者】
部坂 篤(へさか あつし) 吹田いろどり腎臓・糖尿病内科クリニック 院長