2026年7月31日


「HbA1cがなかなか下がらない…」 そんなお悩みをお持ちの方へ。HbA1cは過去1〜2ヶ月の平均血糖値を反映する大切な指標です。日本糖尿病学会の「糖尿病診療ガイドライン2024」では、合併症予防のための目標としてHbA1c 7.0%未満が掲げられています。 この記事では、薬や運動だけに頼らず、毎日の食事の中でHbA1cを改善するための具体的な工夫をご紹介します。
HbA1cとは?なぜ「食事」で変わるのか
HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)は、血液中のヘモグロビンにブドウ糖が結合したもので、赤血球の寿命(約120日)の間に蓄積されるため、過去1〜2ヶ月の血糖状態を反映します。つまり、毎日の食事を見直すことが、数ヶ月後のHbA1cの数値に直結するのです。
糖尿病診療ガイドライン2024では、食事療法によりHbA1cが0.47〜0.82%改善したとするメタ解析の結果が示されており、食事療法は推奨グレードA(合意率100%)で推奨されています。
ポイント① 食べる順番を変える ─「ベジファースト」の実践

食事の最初に野菜・きのこ・海藻などの食物繊維が豊富な食品を食べ、次に肉や魚などのタンパク質、最後にご飯やパンなどの炭水化物を食べる方法です。
食物繊維が胃腸内で粘性を高め、糖質の消化・吸収を緩やかにすることで、食後の血糖値の急上昇(血糖値スパイク)を抑制します。2型糖尿病患者を対象とした研究では、この「食べる順番療法」を2.5年間継続した結果、HbA1cの有意な改善が維持されたと報告されています。
ポイント② 主食を「低GI食品」に置き換える
GI(グリセミック・インデックス)とは、食後の血糖値の上がりやすさを示す指標です。GI値55以下の食品が「低GI食品」とされています。
糖尿病診療ガイドライン2024でも、低GI食は2型糖尿病の血糖コントロールに有効であることが示されています。すべての食事を置き換える必要はなく、1日1食を白米から玄米に変えるだけでも効果が期待できます。
ポイント③ 朝食を抜かない ─「セカンドミール効果」を活かす
朝食を食べることで、昼食後の血糖値上昇も抑えられるという現象を「セカンドミール効果」と呼びます。これは1980年にジェンキンス博士が提唱した概念で、最初の食事(ファーストミール)の内容が次の食事(セカンドミール)後の血糖応答に影響を与えることを意味します。
逆に朝食を抜くと、空腹の時間が長くなりインスリン分泌の調整がうまくいかず、昼食後に血糖値が急上昇しやすくなります。忙しい朝でも、ゆで卵1個・ヨーグルト・ナッツなど手軽なものでかまいません。
ポイント④ 「隠れ糖質」に注意する
食事に気をつけていても、飲み物に含まれる糖質を見落としていませんか?
・スポーツドリンク500ml:糖質20〜34g → 角砂糖約5〜8個分
・190mlの缶コーヒー(加糖):糖質2〜13.5g → 角砂糖約1〜3個分
・500mlの炭酸飲料:糖質40〜65g → 角砂糖にして約10〜16個分に相当
日常的に甘い飲み物を摂っている方は、水・お茶・無糖の炭酸水に切り替えるだけでも大きな改善が期待できます。
ポイント⑤ 間食を「賢く」選ぶ
間食をすべて我慢する必要はありません。血糖値を急上昇させにくい食品を選びましょう。
・素焼きナッツ(アーモンド・くるみなど):低糖質・良質な脂質・食物繊維が豊富。1日25〜30g(ひとつかみ程度)が目安
・高カカオチョコレート(カカオ70%以上):少量で満足感。ポリフェノールも含む
・無糖ヨーグルト:タンパク質補給にもなり、血糖の急上昇を起こしにくい
「糖質制限」との向き合い方
近年注目される糖質制限ですが、日本糖尿病学会のガイドライン2024では、6〜12ヵ月以内の短期間であれば炭水化物制限による血糖コントロール改善の有効性が認められています(推奨グレードB)。一方で、12〜24ヵ月以上の長期間では対照群と差がなくなるという報告や、50g/日以下の極端な制限では改善が認められなかったとする報告もあります。現時点では、炭水化物のエネルギー比率50〜60%を目安に、質の良い炭水化物(玄米・全粒粉・豆類など)を選ぶことが推奨されています。極端に糖質を減らすのではなく、「糖質の質と量を整える」という意識が大切です。
当院の栄養指導について
吹田いろどり腎臓・糖尿病内科クリニックでは、管理栄養士による栄養指導を実施しています。患者さんお一人おひとりの生活スタイルに合わせた、無理のない食事療法をご提案いたします。

また、当院が入るグローバルビレッジ津雲台の施設内には、糖質制限スイーツのカフェやメディカルフィットネスがあり、当院と提携しています。「甘いものを我慢するのがつらい」という方にも、楽しみながら治療を続けていただける環境を整えています。
「HbA1cの数値が気になる」「食事の見直し方がわからない」という方は、お気軽にご相談ください。
【参考文献】
- 日本糖尿病学会 編著.「糖尿病診療ガイドライン2024」. 南江堂; 2024.(ISBN 978-4-524-20425-0)
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「糖尿病の食事」
- 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024 第3章 食事療法」
【執筆者】
部坂 有紀(へさか ゆき) 吹田いろどり腎臓・糖尿病内科クリニック 副院長
※本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。
※症状には個人差があり、記載内容がすべての方に当てはまるわけではありません。
※具体的な治療方針については、必ず医師の診察をお受けください。